第3回教育懇談会in旭川(要旨) 「子どもの生活習慣形成と親の役割」
始めに子どもを取り巻く生活環境の変化を見ていきたいと思います。第1次、第2次ベビーブームを経て1970年代になると、我が子をどう育てたら良いか分からない母親が現れてきます。80年代後半からバブル景気により女性の就労が増加し、90年には合計特殊出生率が1.57となって国民にショックを与えました。出生率はその後も下降を続け、昨年は1.36でした。近年、さらに女性の就労や晩婚化が進み、家庭の育児が孤立化し、子どもの育て方が分からない親がさらに増加しています。政府は、2000年代に入り「健やか親子21」「早寝早起き朝ごはん」などの国民運動を展開して、子どもの生活習慣形成を後押ししています。
まず、食事について見ていきますが、政府は若い世代(20代、30代)の朝食を抜く割合が15%に至っている現状などから2005年に食育基本法をに定め、関係機関を通じ朝食摂取による様々なメリットを示しました。その中には朝食の摂取が試験の得点向上に結びついたとするものもありました。朝ごはんには、頭にエネルギーを供給し、体温を上げ、体のリズムを作るなどの働きがあります。朝ごはんのおかずの種類が多いほど、また家族が揃って食べる回数が多いほど学業成績が伸びるとする調査結果もあります。食後血糖値の上昇度を示すグリセミック指数から見ると、白いパンよりも白いお米がさらには玄米が脳に良いとする研究成果がありますが、他の食材との組み合わせが重要です。
次に、睡眠についてですが、早寝早起きの大切さには生物学的根拠があります。ヒトは昼に活動する動物としての仕組みを持っていて、体内時計のサイクルは24時間より少し長いのですが、朝浴びる光でリセットされます。また、寝る子は育つと言いますが、遅い時間に寝ると成長ホルモンが十分分泌されないと言われています。米国立睡眠財団は、理想的睡眠時間を公表していて、6~13歳は9~11時間などとしていますが、短い時間でも足りる人がいますので、一概に述べることはできません。
運動は、幼児の場合運動遊びになりますが、この時期の運動遊びが生涯の体力を左右すると言われています。子どもの体力・運動能力は、1985年をピークに低下傾向にあり、その原因は、遊び時間・空間・仲間の「3つの間」が著しく減少したためとされます。基礎的運動能力の獲得が不十分な場合、壮年期の生活習慣病や高齢期の転倒や寝たきりにつながるリスクがあると言われます。子どもに運動をさせるためには、大人が良い見本を示し、TVの視聴時間を制限するなどのほかに、自由遊びを奨励することが肝要です。
最後に、ゲームについて考えたいと思います。子どもへの影響として考える力がつく、想像力が豊になるなどと良い側面もあると言われますが、一般的には悪い側面が多いようです。具体的には、視力が低下する、勉強する時間がなくなる、ゲームに依存しやすくなる、肥満になるなどが挙げられます。昨年5月、WHO(国際保健機構)はゲーム障害を国際疾病分類に認定しました。この治療法には、カウンセリングを行う、デイケアに通わせるほか、入院療法もありますが、道内で入院治療ができる病院は札幌の1か所しかありません。予防のためにはゲームとうまく付き合うことを考えなければなりません。開始する年齢を遅くしたり、一緒にルールを決めたり、内容を制限するなども大切ですが、ゲーム以外の楽しみ例えばスポーツなどへと導くことが重要です。
結論として、子どもの生活リズムを改善してあげることが肝心です。そのためには大人の生活習慣を見直す必要があります。「育児は育自」とも言います。子どもが主体的に生きられるようにしてあげるのが親の役割ではないでしょうか。(令和2年9月12日開催)
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