北海道人格教育ニュース 第14号 2018年3月発行
第3回北海道人格教育セミナー(要旨)
家庭における親の役割
(北翔大学専任講師)
教育基本法では、家庭教育の個所で保護者は、子どもに対し生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める、とされている。しかし、現況は核家族化の進行や地域機能の脆弱化などで子育ての文化が伝わらず、悩んだり、不安を抱いたりしていて孤独な子育てをしている親が多い。昔の子育ては、親50%、祖父母30%、地域20%と言われていたが、今は、祖父母や地域が担っていた部分を様々な方法で補うことが必要になってきている。
そこで幼稚園や保育所の果たす役割が重要になってくる。保育者には、在園児の保護者に対する支援のみならず、地域の子育て家庭の保護者に対する支援も願われている。幼稚園では保育参観の実施や地域の人々に施設を開放したり、未就園児を一時的に受け入れるなどして、幼児期の教育のセンターのような役割を果たしながら、保護者に子どもとの係わり方を学んでもらっている。保育者においては、保育業務と保護者支援が車の両輪である。保育者が保護者の力を引き出すことにより、保護者が自信をもって子育てができるようになれば、子どもが変わり、それが保育者の力を引き出すことになり、保育現場に戻ってくる。保育者は、現場で保護者の話に耳を傾け、共に考え、ほめたり、認めてあげるなどして「自分で選んだんだ」と言う自信を保護者に育み、自己決定を支えるようなかかわり方が大切である。
2016年に十勝、札幌、八戸の30か所の幼児教育機関で1559人の保護者を対象に実施した「子どもの基本的な生活習慣の形成の現状と幼稚園・保育所・認定こども園が果たす役割」の調査結果を、2012年、2003年、1936年に実施した同様な調査結果と比較したものがある。それによると離乳の時期は、近年「卒乳」という考え方の広がりもあって2012年と比較しても1,2か月遅くなっている。食事についてみると、一人で食事ができる時期が以前の調査より6か月~1年遅くなってきていること、また、食事に関して困ったこと・苦労したことの自由記述が143件あり、保護者の食事に対する関心の高いことなどが分かる。睡眠では、1936年の調査開始以来幼児の睡眠時間は年々減少してきたが、2016年の調査で初めて回復傾向が見られた。今回の調査と、前回2012年調査からは、6歳児よりも6~11か月児の睡眠時間が少ないという逆転現象もみられる。こうした結果の背景として、保護者が就労している割合の高い保育所に通う子どもの夜間睡眠時間が短いなど、保護者の生活スタイルが影響を与えているのではないかと思われる。排泄は、近年の傾向として紙おむつの普及もあり、使用離脱時期が遅くなっていて3歳6か月頃であるが、1936年調査では1歳6か月頃であった。昨今は、「おむつはずし」ではなく「おむつはずれ」という考え方が広がっているが、トイレットトレーニングに悩む保護者は少なくない状況だ。そして、この調査に回答した1559人のうち52%は初めて乳幼児を扱う保護者だった。
最後に、保育現場の率直な声を2つ挙げる。1つは、幼児に対する基本的な生活習慣の形成のための援助にかかる時間と労力が年々増加していること。2つ目は、保護者に家庭で行うべきことであることを啓発しても、一向に取り組もうとしない家庭があり、致し方なく園で指導していることが挙げられる。(平成29年11月18日開催)
□オフサイトミーティングでの意見(抜粋)
1グループ-子育てにおいて、責任のなすりあいになっている場合はないだろうか。また、
偏食の問題は大変深刻である。
2グループ-結婚する人には胎教のセミナーが、幼い子どもを持つ親にはしつけのための
セミナーが必要ではないか。
3グループ-父と息子のコミュニケーションの取り方は難しいが大切ではないか。子ども
の将来の目標を応援してあげたい。
4グループ-子育てを母親に任せっきりにせず、町内会組織で青少年育成を支援し、産婦
人科の子育てセンター化を目指してはどうか。
0コメント