北海道人格教育ニュース 第16号 2018年9月発行
北海道人格教育ニュース 第16号
人格教育特別講演in札幌(要旨)
道徳科の新しいアプローチと、大人の人格教育の必要性
(明治大学教授)
私の講演では、参加者がグループに分かれ小学生になったつもりで受けて頂いている。4人が1グループになり、それぞれに自己紹介をしてもらうがその際他の人から反応が返らない場合がある。それは心理的虐待にあたり、教師も子どもに心理的虐待を与えていることがある。話し手の話をひとつひとつ関心を持って聞いてあげ、良かったと思ったことをフィードバックし、さらにポーズを付けて反応してあげると話し手は、聞き手の言葉をより素直に受け取る。
子どもの教育や大人の人格教育において、リレーション(つながり)やエンカウンター(出会い)、そして暖かい心の触れ合いが最も大切であることを教えて下さったのが国分康孝先生である。私は大学1年生の時、先生と食事をする機会を得た。相手が誰であれ人との触れ合いを楽しむことができ、普段からほろ酔い気分で触れ合える教師が良い教師であり、また教師は人間関係のプロフェッショナル出なければならないことなど多くのことを学ばせて頂いた。
私は、現在大学で婚育、結婚能力を育成する授業を熱心に行っている。と言うのは、現在の大学生は、我々(80年代)の頃とは逆の割合で全体の3割しか彼氏や彼女がいない。特に男子学生の恋愛能力が落ちてきており、男子学生は女子学生の手を握るタイミングが分からない。そこで、大学では手を握るトレーニングから始めている。そのようなことをしていると厚生労働白書に少子化対策に貢献している授業として紹介された。
新しい道徳では体験的な学習を求めている。頭で分かっていても行動に移せない子どもが多い。乗り物などで目の前にお年寄りが立っている場合、席を代わってあげようと考えはするが、半数位の子どもは周囲の目を気にして席を代われない。そこで、授業で3人一組になりそれぞれの役を3人が行いグループや学級で話し合う。そうすると年寄り扱いをされることに反発する人もいるので、「良かったら変わりましょうか」と相手の意思を確認した上で席を立つ、などの意見も出てくる。このようにモラルスキルトレーニングをする。
問題解決的な学習も目玉の1つである。モラルジレンマを扱う題材として米国の心理学者コールバーグ作の「ハインツのジレンマ」がある。法律と生命のどちらを優先すべきか考えさせるものだが、子とも達に葛藤させるだけでなく、実際自分だったらどうするかをグループで話し合わせると、例えば交渉する、あるいはツイッターでつぶやき世論を変えるなどの意見が出てくる。子ども達が自分で考え問題を解決していく授業が求められる。「泣いた赤鬼」などを授業で扱う際も同様で、少しの工夫で「考え、議論する道徳」はできる。人物を通して感銘を与える授業も大切、教師が1時間自分の人生を語る授業があっても構わないが、前述のような問題解決的な授業は必要である。
最後に、大人の人格教育について一言だけお話ししたい。ビクトール・フランクルは、生きる意味について述べている。私は、すべての人間はこの世に命をもって生まれてくる時、使命を刻まれて生まれてくると考えており、これを魂のミッションと呼んでいる。わずか数十年でなくなってしまう命をなぜ与えられているか。それはこの人生で果たすべき使命があるからだ。その使命を果たそうとしている時に本当の力が与えられる。(平成30年6月30日開催)
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