北海道人格教育ニュース 第18号 2019年3月発行

人格教育懇談会in旭川(要旨)

    「教科『道徳』について-親たちはどう向き合うか-」

                 (北海道教育大学教職大学院旭川校教授)

 

 なぜ、道徳が教科化されたかについては、滋賀県大津市のいじめによる中学生の自殺事件がきっかけで首相直属の教育再生実行会議が立ち上げられ、そこで議論された結果であるとされている。また、これまでの道徳は、心情主義といわれているが、感動させるところまでで終わってしまい、子どもの行動を変容させるまでには至っていないことが多かった。北海道人格教育協議会のHPを拝見させて頂いたが、会の目的には「普遍的価値としての徳を教え、実践を通して習慣化させることを特徴とする人格教育が・・・」と書いてある。人格教育の本場のアメリカでは、教育の柱に人格教育を取り入れる州が増えてきていると聞いており、フランスでも同様な動きがあるという。

 「生きる力」の基盤となる豊かな人間性に関するものは殆ど道徳の価値項目に該当する。学校は、豊かな人格形成の場である。北海道と本州の小中学校の大きな違いの1つは、北海道は学校行事に命を懸ける(時間をかける)という点である。それは行事を通して子どもが育つ(豊かな人間性が形成される)からである。しかし、近年道教委に出向してきた文科省の官僚の見直し要請により、北海道の学力が全国平均と差があることもあって教科とのバランスを取るべく調整がなされており、現在は過渡期に差しかかっている。

 これまでの道徳教育の目標は、道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度などの道徳性を養うという順番だったのが、今回の改定で判断力が最初に来ることになった。そのため判断力を育成すべく問題提起型の授業を行うことや、授業の中で議論することが求められるようになり、それまでの授業を変えなければならない部分が出てきている。また、特定の価値観を押し付けないことも中教審答申に謳われている。端的にまとめると、「特別の教科 道徳」が求めているのは量的確保と質的改善である。

 北海道の道徳授業の課題は、第1に自己の生き方や人間としての生き方について深く考えさせない授業が見られること。第2に校内行事などの事前・事後指導あるいは生徒指導の時間になってしまっている授業が見られること。第3にマスコミなどの影響を受け、指導計画を安易に変更する授業が見られること。そして、私自身もなぜ子どもは感動・共感しても、実践できるようにならないのか、実効性は問われないのかなどの疑問を持っており、道徳授業の硬直化を感じていた。

 これからの道徳の授業について文科省の専門家会議は、登場人物への自我関与が中心の学習、問題解決的な学習、体験的な学習などを提示している。どんな価値項目の時に問題解決的な学習を行ったら良いのかなどは、これから様々な実践を通して積み上げていく必要がある。北海道人格教育協議会の目標にもあるように、子ども達に価値項目が身についたかどうかを、学校行事などの場で確認すべきである。つまり、事前・事中・事後の流れを大切にして行くことにより、道徳性は身につく。

 最後に、学校では子どもの心を育てるために様々な取り組みを行っている。校長が校門に立って子ども達に挨拶をしたり、授業を親だけではなく地域全体にも公開したりしている学校も増えてきている。家庭や地域と一体となって地域行事やボランティアへ積極的に参加しているところもある。是非、学校を応援してあげて欲しい。また、子どもたちの道徳性・自尊感情・職業観は、親の影響を大きく受けるので、話し合いの時間を設け、励まし・賞賛・認めてあげることなどをお願いしたい。(平成30年9月29日開催)


北海道人格教育協議会

教育の目的は、教育基本法の第一条にあるとおり、「人格の完成」にあります。子どもたちの豊かな未来、幸せな未来のために、家庭・学校・地域社会が連携しながら役割を果たすことができるように、「人格教育」とは何かを考え、実践していきたいと思います。

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