北海道人格教育ニュース第4号 2015年9月発行
第1回北海道人格教育セミナー(要旨)
親の意識をどう高めるか
山谷 敬三郎(北翔大学教授、本会会長)
子ども達は様々な問題で苦しんでいるが、その解決を図る際に子どもと親との関係を改善して行かなければならない場面が数多く生じる。本日は、交流分析を紹介しながら、私達は親にどう対応したらよいか考えてみたい。
エゴグラムという自己理解のための調査がある。これによって自分の性格や他人への対応の仕方の特徴を知ることができる。さらに、自分が無意識に身につけている問題処理方法、これを脚本というが、この脚本を分析することにより問題解決につなげていこうというのが交流分析の考え方である。
交流分析は、フロイトの精神分析学を基に考えられたものである。「超自我」は成長過程で獲得したモラル、理想像など、「自我」は自分らしさ、「エス」は本能的なものと位置づけている。そして、複雑なフロイトの考え方をより平易なものにしたのが米国のエリック・バーンである。彼は、超自我をP(Parent)、自我をA(Adult)、エスをC(Child)とした。その上で、フロイトの考え方に基づきPを父性的なCPと母性的なNPに、Aを理性的な自分とし、Cは素直なACと自由で気ままなFCの2つに分けた。
この5つの要素はどの人にも備わっているが、その現れ方の強弱を理解するのがエゴグラムである。私達は、TPOに応じて5つの自分を使い分けている。親が子どもと会話をするとき、5つのどれを中心に会話し、また子どもがどれを中心に言葉を発しているかを分析し、どのように対応すべきかを親に示すのが、交流分析に基づくカウンセリングである。
次に、自分自身の中のP・A・Cのどれが働いているかを観察し、自身をコントロールする働きをするのがSで、これはセルフ(SELF)の略称である。子どもは基本的にFCから発しているので、親は観察する自我Sで受けると適切に対応できる。
ある人がどのような生き方をするようになるかに深く関係するのが「人生脚本の形成のプロセス」である。親子関係などが上手に行くと(+)のパターンとして「自他肯定」となり自分が愛されていると感じ、他人も信頼できる感覚を持つようになり、様々なことにチャレンジすることができるようになる。一方、上手に行かないと(-)のパターンとして「自己否定・他者肯定」、逆に「自己肯定・他者否定」、あるいは「自他否定」という3パターンの感覚を持つようになる。この場合、愛着や絆、いわゆる基本的信頼の形成が成されないことによりゆがんだ人間関係を築いたり、異常な性格を形成したりするようになる。
基本的信頼感は、子どもがFCから要求を発したとき、親がNPで受け、子どもの欲求・感情に寄り添った並行的交流に基づき、その要求に対応することにより形成される。しかし、親自身の自我Sが育っていない場合、親もFCで応えたり、あるいは親がA(理性)で受けたり、機械的な育児態度をとったりした場合、基本的信頼感は形成されない。ただ、幼児期に形成された親子関係により罪を犯すことがあっても、医療少年院等で十分更生することが可能であり、酒鬼薔薇聖斗の例もある。また、研究者は子どもの自己否定意識形成に関しては、生後1年未満での母子の触れ合いの環境による影響を指摘している。
自他肯定のベースは、自尊感情であり、自己肯定感である。しかし、親はややもすると、良い成績を取るなど、良いことをしたから褒めるという社会的なことで評価しようとする傾向がある。大切なことは、親が子どもにどんな時にも関心を持っているということを示し続けることである。昨今の子どもの状況は、人格教育やモラルが失われつつある親や社会の姿を反映しているのではないかと危惧している。こうしたことからも我々は、人格教育の必要性を叫び続けていかなければならない。
□オフサイト・ミーティングでの意見(抜粋)
1グループ-社会で認められることが自己肯定の条件であるかのように捉えられている。
2グループ-思春期などには、寮生活をさせて社会性を育てることも良いのではないか。
3グループ-核家族の中でゲーム漬けになっている子どもは、生命を軽んじる傾向がある。
4グループ-保育園では、子どもの支援より親への支援に比重が移ってきている。
5グループ-教師は大学で今日の講演内容を身につけ、もっと社会経験を積んで欲しい。
6グループ-夫婦関係が崩れてきていて、子育てにも影響が大きい。
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