北海道人格教育ニュース 11号2017年6月発行
第4回北海道人格教育フォーラム(要旨)
子どもを支える地域社会づくり
(前北海道教育大学准教授)
私は以前、石狩市の子ども会で会長を務め、そこでサタデイスクールを開いていたことがある。大学では、ロシア革命後少年院の所長をしながら非行少年などの再教育を行った教育家マカーレンコの研究をしていたが、現在大学から解放され、行政とも関わりつつ非行少年や障害児などの更生を促す活動に全面的に取り組めるようになった。
さて、「子どもを支える地域社会づくり」だが、結論から言うと不可能ではないかもしれないが著しく困難であると言わざるを得ない。その根拠は第1に地域住民における階層間格差の拡大が挙げられる。第2は大企業における市場中心主義で、不測の事態に備えるための企業内部留保金や株式配当の増加。第3は現代の学校における選別機能やあるべき教育パフォーマンスが未達成である点。第4は子どもの「学校化」の強化、つまり指示まち人間をつくってしまっているのでないかという懸念。最後に最大のものとして、教員の多忙化によって丁寧な指導ができにくくなることによる教師力・教育力の低下が考えられる。
次に、現代日本を取り巻く諸課題について経産省の若手官僚らが先月まとめた提言「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」を手がかりに考えて見たい。この提言は、高齢者への財政支出が現役世代への5倍に上り、現役世代に極端に冷たい社会のしわ寄せが子どもに向かっていると指摘。高齢者も働ける限り社会に貢献し、未来を担う子どもへの支援に真っ先に予算を確保するよう求めているが、私は評価をしつつも、世代間対立を煽ることには反対である。国は、ひとり親家庭の貧困率が5割を超え先進国中最悪の水準にあるにもかかわらず、子育ては親の責任であるとして突き放しているのではないだろうか。また、日本の若者の社会貢献意識は高いが、社会を変えられると思っていないため、社会貢献を諦め自己中心化してしまう傾向がある。
家庭教育との関わりでは、いわゆるキレる子どもについてだが、子どもの問題行動に向き合ってきた増田修治(白梅学園大学教授)氏は、年長~小学校低学年の子どもに「中間反抗期」があると言われ始めている述べている。この時期の子どもに親の指示が多いと、子どもは自分のやりたいことと親からやれと言われたことの折り合いをつけられず、パニックになってキレてしまう。この場合は子どもが何をしたいのかを聞いてあげるのが良い。
最後に地域でできることを具体的に見ていきたい。内閣府が平成22年に行ったひきこもりの調査では、推計で69.6万人いるという結果が出ている。NHKが25年に取り上げた「ひきこもりを地域の力に~秋田県藤里町の挑戦~」によると、藤里町(人口3800人)はひきこもりの人たちが本格的に働くまでの中間的な働き方ができる就労支援施設を開設し、お年寄りの買い物サポートや商品の配達など活躍の場を準備し、町のまつりや行事などに出てきて手伝ってもらい顔見知りになる場を積極的に作っていった。その結果、同町でひこもっていた113人のうち、50人以上が家を出て、そのうち36人がすでに働き始めている。障害を持つ人々を登用する試みは、大阪府の豊中市では市を挙げて取り組んでいるが、こうした問題を自分たちの問題と考えるNPOなどの取り組みも地域で活発になりつつある。
<ディスカッション>
参加者:行政との関わり方で気を付けるべきことは何か。
講 師:プライドを傷つけないように配慮し、相手(人)を見て頼ることである。
参加者:家庭と学校の絆を強めるにはどうしたらよいか。
講 師:学級通信に子どもの良い面を取り上げて出すと効果的である。
(平成29年6月4日開催)
□先人に学ぶ「中学校道徳学習指導略案集」(道徳教材作成委員会編)7月1日発行予定
27人の人物を22価値項目に配置し、それぞれに指導略案、生徒配付資料、教師用資料
人物例:内村鑑三、中谷宇吉郎、浅川巧、高松凌雲、勝海舟、渋沢栄一、伊能忠敬
八田與一、広井勇、知里幸恵、新渡戸稲造、李方子、杉原千畝、マザー・テレサ他
*学校や家庭での活用が可能(正会員には無料配布、定価500円)、全112ページ手作り
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